FIP (猫伝染性腹膜炎)
北広島市、恵庭市の動物病院、きたひろ動物病院です。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis:FIP)は致死率が非常に高く、猫の飼い主たちに長らく恐れられてきた疾患です。しかし、ここ数年で国際的な診断ガイドラインのアップデート、治療薬の開発が一気に進み、「治せる可能性のある疾患」として大きく注目されるようになってきました。
そこで、国際猫医学会(ISFM)から発表されたガイドラインや治療プロトコルを一部お伝えしていきたいと思います。
FIPの病原体
FIPの病原体はFIPウイルス(FIPV)である。
FIPVは猫コロナウイルス(FCoV)の2つの生物型の1つである。
もう一つの生物型は猫腸コロナウイルス(FECV)であり、こちらは腸炎の原因とされる。
FIPのタイプ
ウェットタイプ:貯留液が溜まるタイプ(腹水、胸水)
ドライタイプ:実質臓器に化膿性肉芽腫が形成される
それぞれに眼に症状を伴う眼型、神経症状を伴う神経型がある。
実際はウェットとドライは併発していることも多い。タイプや型によって薬剤の投与量が異なるため、必ず眼・神経症状を確認するべきである。
FIPの診断
FIPの臨床所見は多様性に富み、総合的な検査の実施が不可欠である。
身体検査、画像検査、血液検査、(滲出液の検査)、抗原・抗体検査、遺伝子検査など
上記検査を実施し、FIPに似た疾患を除外することで診断を行う。
FIPの治療を確実に行うためには、FIPか否かを正確かつ迅速に診断する必要がある。しかし、FIPの診断は難しい。そのため、他の疾患の除外とFIPに特徴的な所見をもって総合的に判断し治療を行う。
FIPの治療
現在、FIPの治療を目的として動物用医薬品は存在しない。
したがって、FIPの治療を行うためには他の動物用医薬品の適応外使用、ヒトの医薬品の適応外使用または医薬品・動物用医薬品以外の未承認医薬品の使用のいずれかを実施する必要がある。
FIPの治療法は確立していないが、ISFMから発表されたプロトコルではレムデシベルおよびGS-441524の推奨投与量が記載されている。
*モルヌピラビルについて*
モルヌピラビルは正規の医薬品が存在するが、残念ながらそれを用いた治療試験は実施されていない。FIP治療におけるモルヌピラビルの最適な容量は公式に決まっていないのが現状なため、今後の検証が必要だと思われる。
※当院でのFIPの治療については受診時に詳しくご説明致します。